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WordPress 6.5で実装されたフォントライブラリ機能完全ガイド

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WordPress 6.5で実現した「フォントライブラリ」とは?

2024年3月にリリースされたWordPress 6.5の目玉機能の一つが、待望の「フォントライブラリ」です。この新機能により、WordPressユーザーは追加プラグインなしで、サイト全体のフォントを簡単に管理できるようになりました。特にGoogleフォントの直接統合や独自フォントのアップロードなど、これまでプラグインに頼っていた機能がWordPressのコア機能として利用可能になったことは、大きな進化と言えます。

この記事では、フォントライブラリの基本的な使い方から高度な設定まで、サイトデザインを向上させるための実践的なガイドを提供します。

なぜフォントライブラリが重要なのか?

フォントはウェブサイトのブランドアイデンティティ、読みやすさ、そしてユーザー体験に大きな影響を与えます。これまでWordPressでフォントをカスタマイズするには、以下のような選択肢がありました:

  1. テーマが提供する限られたフォントオプションを使用する
  2. カスタムCSSを記述してウェブフォントを実装する
  3. プラグインを導入してフォント管理を行う

これらの方法にはそれぞれ課題がありました。テーマの選択肢は限定的で、カスタムCSSは技術的知識が必要で、プラグインは追加の依存関係やパフォーマンスへの影響がありました。

WordPress 6.5のフォントライブラリは、これらの課題を解決し、以下のメリットを提供します:

  • シンプルさ:技術的知識がなくてもフォントを簡単に追加・管理
  • パフォーマンス:最適化されたフォント読み込みによるサイト速度向上
  • プライバシー:Googleフォントをローカルホスティングして訪問者のプライバシー保護
  • 一貫性:サイト全体で統一されたタイポグラフィの実現
  • 依存関係の削減:フォント管理プラグインが不要に

フォントライブラリの基本的な使い方

WordPress 6.5でフォントライブラリを使い始める方法は非常にシンプルです。ただし、この機能を利用するには「ブロックテーマ」を使用している必要があります。従来のクラシックテーマではこの機能を利用できませんので注意してください。

フォントライブラリへのアクセス方法

  1. WordPress管理画面から「外観」→「エディター」を選択
  2. 右上の「スタイル」アイコンをクリック
  3. 「タイポグラフィ」を選択
  4. 「フォントを管理」ボタンをクリック

これで、フォントライブラリの管理画面が表示されます。ここから、インストール済みのフォントの確認、新しいフォントのインストール、フォントの削除などが行えます。

フォントライブラリで可能なこと

WordPress 6.5のフォントライブラリでは、主に以下の3つのことが可能です:

機能 説明 使用例
Googleフォントの追加 1000以上のGoogleフォントから選んでインストール 見出しに「Montserrat」、本文に「Open Sans」を使用
ローカルフォントのアップロード 購入したフォントや独自フォントをアップロード 企業ブランドフォントをサイト全体に適用
フォントの適用管理 見出し、本文など要素別にフォント設定 H1~H6、段落、ボタンなど各要素に異なるフォント適用

Googleフォントを追加する手順

Googleフォントは豊富な種類があり、無料で使えることから最も人気の高いウェブフォントです。フォントライブラリを使ってGoogleフォントを追加する手順は以下の通りです:

  1. フォントライブラリ管理画面で「フォントをインストール」タブを選択
  2. 「Googleフォント」セクションで「Googleフォントへのアクセスを許可」をクリック
  3. 検索バーでフォント名を検索するか、カテゴリから閲覧
  4. 使いたいフォントを見つけたら、そのフォント名をクリック
  5. プレビューを確認し、使用したいウェイト(太さ)やスタイル(斜体など)を選択
  6. 「インストール」ボタンをクリック

インストールされたGoogleフォントは、サーバーにダウンロードされローカルで配信されます。これにより、プライバシー規制の厳しい地域(EU等)でも問題なく利用できるほか、表示速度の向上も期待できます。

Googleフォント選びのポイント

効果的なフォント選定のために、以下のポイントを考慮しましょう:

  • 読みやすさを優先:特に本文テキストは読みやすさを最優先
  • ウェイトのバリエーション:見出しから本文まで使える複数のウェイトがあるフォントを選択
  • 文字のサポート範囲:日本語コンテンツの場合、日本語をサポートするフォントを確認
  • ページ読み込み速度への影響:多すぎるフォントウェイトはパフォーマンスに影響するため、必要最小限に

カスタムフォントをアップロードする方法

独自のフォントや商用フォントをサイトで使いたい場合は、直接アップロードする機能が便利です。手順は以下の通りです:

  1. フォントライブラリ管理画面で「フォントをインストール」タブを選択
  2. 「フォントをアップロード」セクションをクリック
  3. 「新しいフォントファミリーを追加」をクリック
  4. フォントファミリー名を入力(例:「Corporate Brand Font」)
  5. フォントファイルをアップロード(対応フォーマット:.woff2, .ttf, .otf)
  6. フォントスタイル(Regular, Bold, Italic など)とウェイトを設定
  7. 「追加のフォントファイルを追加」で別のウェイトやスタイルを追加可能
  8. 「保存」をクリック

フォントファイルは.woff2形式が推奨されます。これは最も圧縮率が高く、最新のブラウザで広くサポートされているためです。.ttfや.otfファイルもサポートされますが、ファイルサイズが大きくなりがちです。

アップロードの際の注意点

カスタムフォントをアップロードする際は、以下の点に注意しましょう:

  • ライセンス確認:フォントのライセンスがウェブ使用を許可しているか確認
  • ファイルサイズ:大きすぎるフォントファイルはパフォーマンスに影響
  • 文字範囲:特に日本語フォントは文字数が多いため、使用する文字セットを絞ることも検討
  • フォントファミリー情報:正確なフォント名とウェイト情報を入力

フォントを効果的にサイトに適用する方法

フォントをインストールしたら、次はサイト全体に効果的に適用しましょう。WordPress 6.5では、グローバルスタイルを通じてさまざまな要素にフォントを適用できます:

基本的なフォント適用手順

  1. 「外観」→「エディター」から「スタイル」パネルを開く
  2. 「タイポグラフィ」を選択
  3. 「テキスト」セクションで以下の設定が可能:
    • 「全般」:サイト全体のデフォルトフォント
    • 「見出し」:すべての見出し(H1-H6)のデフォルト
    • 「各見出し」:H1からH6まで個別に設定
    • 「段落」:本文テキスト専用の設定
  4. 各セクションで「フォント」オプションをクリックし、インストール済みのフォントから選択
  5. フォントサイズ、行の高さ、装飾なども同時に設定可能

高度なフォント適用テクニック

より細かくフォントをカスタマイズするには、以下のテクニックが役立ちます:

  • ブロックタイプ別の設定:特定のブロック(ボタン、引用など)にカスタムフォント設定
  • カラーバリエーションとの組み合わせ:背景色に合わせたフォントスタイル
  • スタイルバリエーションの活用:同じブロックに複数のスタイルを用意
  • responsive font-size:画面サイズに応じて自動調整されるフォントサイズ設定

フォントライブラリのテクニカルな側面

フォントライブラリは単なるUIの変更ではなく、技術的にも優れた実装がなされています:

パフォーマンス最適化

WordPress 6.5のフォントライブラリには、以下のパフォーマンス最適化が施されています:

  • フォントファイルのローカルホスティング:外部サーバーへのリクエストを減らし、読み込み速度を向上
  • font-display: swap の自動適用:テキストがフォント読み込み前に表示されるよう最適化
  • サブセット機能:使用する文字だけを含めた最適化(特に非ラテン文字に有効)
  • プリロード対応:重要なフォントファイルを優先的に読み込み

開発者向け機能

WordPress開発者にとっては、フォントライブラリAPIを通じて拡張機能の開発が可能です:

  • カスタムフォントソース:独自のフォントプロバイダを追加可能
  • プログラム的なフォント管理:PHPコードからフォントを管理
  • フォント設定のカスタマイズ:特定のフォント読み込み方法のカスタマイズ
  • テーマ統合:テーマデフォルトフォントとしてフォントライブラリを活用

開発者向けに追加された主なフックは以下の通りです:

フォントライブラリの制限事項と注意点

フォントライブラリは強力な機能ですが、以下のような制限や注意点もあります:

  1. ブロックテーマ限定:従来のクラシックテーマでは使用できない
  2. 対応フォント形式の制限:主に.woff2、.ttf、.otfのみサポート
  3. 可変フォント対応の限定:一部の可変フォント(Variable Font)機能が制限される場合がある
  4. 大量のフォントによるパフォーマンス影響:多すぎるフォントファミリーやウェイトはサイト速度低下の原因に
  5. 既存サイトとの互換性:既存のフォント設定との競合可能性

フォントライブラリを活用するベストプラクティス

フォントライブラリを最大限に活用するためのベストプラクティスを紹介します:

1. フォントの選択と組み合わせ

  • 最大2-3種類のフォントファミリーに制限(見出し用、本文用、アクセント用)
  • 同じフォントファミリー内で複数のウェイトを活用
  • 対比的な組み合わせ(セリフ+サンセリフなど)で視覚的階層を作る

2. パフォーマンスへの配慮

  • 必要最小限のウェイトとスタイルのみをインストール
  • 日本語フォントは特に必要な文字セットのみに絞る
  • Core Web Vitalsへの影響を定期的に確認

3. アクセシビリティの確保

  • 読みやすさを優先した選択(特に本文フォント)
  • 十分なコントラストとフォントサイズの確保
  • 視覚障害のある方への配慮(過度に装飾的なフォントを避ける)

4. レスポンシブデザインへの対応

  • モバイル画面でも読みやすいフォント選択
  • レスポンシブフォントサイズの設定
  • 複数デバイスでのテスト

フォントライブラリに関するよくある質問

フォントライブラリについて、サイト管理者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました:

Q1: 既存の有料フォントプラグインはもう必要ない?

A: 基本的なフォント管理ならフォントライブラリで十分ですが、より高度な機能(フォントの条件付き適用、複雑なタイポグラフィなど)を必要とする場合は、専用プラグインが依然として役立つことがあります。

Q2: 日本語フォントも使える?

A: はい、GoogleフォントのNoto Sans JPやKosugi、M PLUSなどの日本語フォントも利用できます。ただし、日本語フォントはファイルサイズが大きいため、サブセッティングなどの最適化が重要です。

Q3: クラシックテーマでも使えるようになる予定はある?

A: 現在のところ、フォントライブラリはブロックテーマのみの対応で、クラシックテーマへの拡張予定は公式には発表されていません。クラシックテーマを使い続ける場合は、従来のフォント管理プラグインを使用するか、ブロックテーマへの移行を検討する必要があります。

Q4: インストールできるフォント数に制限はある?

A: 技術的には制限はありませんが、多すぎるフォントはサイトのパフォーマンスに影響するため、必要最小限にとどめることをお勧めします。実用的には2〜3種類のフォントファミリーが理想的です。

実践例:フォントライブラリを使ったサイトデザイン改善

フォントライブラリを使って実際にサイトデザインを改善した例を紹介します:

ケーススタディ1:企業サイトのリブランディング

  • 課題:新しい企業ブランドガイドラインに合わせたフォント実装
  • 実施内容:カスタム企業フォントをアップロード、見出しと本文に異なるウェイト適用
  • 結果:ブランドの一貫性向上、プロフェッショナルな印象の強化

ケーススタディ2:読みやすさの改善

  • 課題:ブログコンテンツの長文読解性向上
  • 実施内容:本文フォントをより可読性の高いものに変更、行間や文字間隔の最適化
  • 結果:滞在時間30%増加、コンテンツ消費率の向上

まとめ:フォントライブラリの可能性を活かす

WordPress 6.5で導入されたフォントライブラリは、サイトのタイポグラフィ管理に革命をもたらしました。プラグインなしでの高度なフォント管理が可能になり、サイトデザインの可能性が大きく広がっています。

フォントライブラリの主なメリットを再確認しましょう:

  • 追加プラグインなしでのフォント管理
  • Googleフォントのローカルホスティングによるプライバシーとパフォーマンスの向上
  • カスタムフォントの簡単アップロード
  • サイト全体での一貫したタイポグラフィの実現

これからWordPress開発はさらに進化し、フォントライブラリも機能拡張されていくでしょう。まずはサイトをブロックテーマに移行し、この強力な新機能を活用してサイトのビジュアルとユーザー体験を向上させてみてください。

当社では、WordPress 6.5へのアップデートサポートやブロックテーマへの移行、サイトデザイン最適化のコンサルティングを行っています。フォントライブラリ活用についてのご質問やサポートが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。