WordPressの進化が加速中!初心者も知っておきたい最新変更点
WordPressは世界で最も使われているCMS(コンテンツ管理システム)ですが、特にここ2年間で大きな変化を遂げています。2023年から2024年にかけて、WordPressはブロックエディタ(Gutenberg)の進化を中心に、多くの新機能や改良を導入してきました。
この記事では、WordPress初心者の方でも理解できるよう、この2年間で起きた主要な変更点を分かりやすく解説します。サイト管理者として知っておくべき重要な機能や、サイト制作・運営に役立つ新しい可能性について、順を追って説明していきます。
1. フルサイトエディタ(FSE)の完全実装 – サイト全体を視覚的に編集
2023年初頭から、WordPress 6.3でついに「フルサイトエディタ」(FSE)が完全実装されました。これはGutenbergプロジェクトのフェーズ2の完成形であり、WordPressの操作性を大きく変えた最も重要な変更点です。
フルサイトエディタとは?
フルサイトエディタは、その名の通り「サイト全体」をブロックエディタで編集できる機能です。従来のWordPressでは、投稿や固定ページの内容はエディタで編集できても、ヘッダーやフッター、サイドバーなどのサイト構造部分はテーマのカスタマイズ機能やPHPコードの編集が必要でした。
フルサイトエディタによって以下が可能になりました:
- テンプレートの視覚的編集:ホームページ、投稿ページ、固定ページなどのテンプレートをブロックで編集
- テンプレートパーツの編集:ヘッダー、フッター、サイドバーなどをブロックで自由にデザイン
- グローバルスタイルの設定:サイト全体のフォント、色、スペースなどのデザイン要素を統一管理
初心者にとってのメリット
フルサイトエディタの登場は、特に技術的知識が少ない初心者にとって大きなメリットがあります:
- コーディング不要:PHPやHTMLの知識がなくても、サイト全体のデザインをカスタマイズできる
- 直感的な操作:「見たまま編集」が可能になり、変更結果をリアルタイムで確認できる
- 学習コストの低減:様々なツールを使い分ける必要がなく、統一されたインターフェースで編集できる
注意点:フルサイトエディタを使用するには「ブロックテーマ」(Twenty Twenty-Three, Twenty Twenty-Four など)を使用する必要があります。従来の「クラシックテーマ」では一部機能が使えない場合があります。
2. WordPress 6.5の新機能:フォントライブラリでデザインの幅が広がる
2024年3月にリリースされたWordPress 6.5では、「フォントライブラリ」という新機能が追加されました。これにより、サイトのフォント管理が格段に簡単になりました。
フォントライブラリの主な機能
- Googleフォントの直接統合:1000種類以上のGoogleフォントをWordPress内から直接検索・追加できる
- カスタムフォントのアップロード:独自のフォントファイル(.woff2, .ttf, .otf)をアップロード可能
- ローカルホスティング:外部サーバーに依存せず、自サイトからフォントを配信(プライバシー面も安心)
- サイト全体のフォント設定:見出し、本文、ボタンなど要素ごとにフォントを適用
初心者でも簡単にフォントをカスタマイズ
これまでフォントを変更するには、CSSの知識が必要だったり、専用のプラグインを導入する必要がありましたが、フォントライブラリの導入によって、操作画面から数クリックでフォントを変更できるようになりました。
フォントライブラリを使うには:
- 「外観」→「エディター」を開く
- 画面右上の「スタイル」アイコンをクリック
- 「タイポグラフィ」を選択
- 「フォントを管理」ボタンをクリック
注意点:フォントライブラリもブロックテーマでのみ使用可能です。また、多数のフォントやウェイトを使用するとページ読み込みが遅くなる可能性があるため、必要最小限に抑えましょう。
3. パフォーマンスの大幅向上:サイト表示速度が改善
2023年はWordPressのパフォーマンス面でも大きな進歩がありました。サイト表示速度はSEOや訪問者体験に直結する重要な要素です。
Core Web Vitalsスコアの向上
WordPress公式の発表によると、2023年にはWordPressサイト全体のCore Web Vitals(Googleが重視するパフォーマンス指標)の合格率が大幅に向上しました:
- モバイル:28.31% → 36.44%(+8.13%)
- デスクトップ:32.55% → 40.80%(+8.25%)
特に読み込み速度を示す「LCP」(Largest Contentful Paint)指標が大きく改善され、モバイルで+8.89%向上しています。
初心者が活用できる高速化機能
WordPressの最新バージョンでは、初心者でも特別な設定なしに恩恵を受けられる以下のような高速化機能が実装されています:
- AVIF画像フォーマットサポート(WordPress 6.5):JPEGと比較して最大50%小さいファイルサイズを実現
- 遅延読み込みの最適化:画面に表示される重要な画像・コンテンツを優先的に読み込む
- ブロックエディタの高速化:編集画面の読み込みが2倍速く、入力レスポンスが4倍向上(WordPress 6.5)
- CSS/JSの最適化:必要最小限のコードのみを読み込むよう最適化
これらの機能を最大限活用するには、WordPressを最新バージョンに更新し、可能であればブロックテーマを使用することをお勧めします。
4. プラグイン依存関係機能:互換性問題の解消へ
WordPress 6.5では、プラグイン管理における重要な問題を解決する「プラグイン依存関係」機能が導入されました。これにより、プラグイン間の互換性問題によるエラーが大幅に減少します。
プラグイン依存関係とは?
あるプラグインが正常に動作するために、別のプラグインが必要な場合があります。例えば、WooCommerceの拡張プラグインはWooCommerceプラグイン本体がなければ機能しません。
従来は、依存関係のあるプラグインを誤って無効化したり、必要なプラグインなしで拡張プラグインを有効化しようとしたりすると、エラーが発生していました。
新機能の主なメリット
プラグイン依存関係機能により、以下のような改善がもたらされます:
- 依存プラグインの明示表示:プラグイン一覧で「必要なプラグイン」が明示される
- 有効化の制限:必要なプラグインがインストール・有効化されていない場合は有効化できない
- 無効化の保護:他のプラグインに必要とされているプラグインの無効化時に警告表示
- エラー防止:必要な条件が整わない状態でのプラグイン有効化によるエラーを防止
初心者にとっては、「なぜプラグインが動かないのか」といった原因特定が難しい問題が減り、より安定したサイト運営が可能になります。
5. Block Bindings API:カスタムフィールドとブロックの連携が容易に
WordPress 6.5で導入された「Block Bindings API」は、カスタムフィールドなどの動的データとブロックを簡単に連携できる機能です。これまで複雑だった動的コンテンツの表示が、初心者にも扱いやすくなりました。
Block Bindings APIで何ができる?
この機能により、標準のWordPressブロックに動的データを表示できるようになりました:
- カスタムフィールドの表示:商品価格、イベント日時などのカスタムフィールド値を段落や見出しブロックに表示
- 条件付き表示:特定の条件に基づいてブロックの表示/非表示を切り替え
- ユーザー情報の表示:ログインユーザー名などを動的に表示
- データベース値の表示:サイト設定や保存された値を任意のブロックに表示
初心者向けの実用例
例えば以下のようなことが、専門的な知識なしで実現できるようになります:
- 不動産サイトで、物件の「価格」「面積」「住所」などのカスタムフィールドを標準ブロックで表示
- イベント情報の「開催日」「会場」「定員」などを動的に更新
- 会社情報(住所、電話番号など)を一元管理し、サイト全体で一貫して表示
カスタムブロックを開発する代わりに、既存のブロックとカスタムフィールドを「バインド(紐づけ)」するだけで実現できるため、初心者でも比較的簡単に高度な機能を実装できます。
6. AIとの融合:Jetpack AIアシスタント
2023年6月、WordPress.comとJetpackユーザー向けに「Jetpack AI Assistant」が導入されました。これはAI(人工知能)を活用してコンテンツ作成を支援する機能です。
Jetpack AIの主な機能
Jetpack AIは、WordPress内で直接利用できるAIアシスタントで、以下のような機能を提供します:
- コンテンツ生成:指示に基づいた記事、リスト、表などの作成
- 文章改善:既存テキストの拡張、要約、トーン調整
- 文法・スペルチェック:文法ミスや誤字の修正
- 多言語翻訳:コンテンツを複数の言語に翻訳
- タイトル生成:記事の内容に基づいた魅力的なタイトル提案
初心者にとってのメリット
特にブログ初心者やライティングに自信がない方にとって、Jetpack AIは以下のような利点があります:
- 記事作成の効率化:アイデアを整理し、素早く下書きを作成
- ライターズブロックの解消:書き始めるのが難しい時の助け
- 文章の質向上:より読みやすく、魅力的な文章への改善
- 多言語対応:言語の壁を超えたコンテンツ制作
注意点:Jetpack AIは基本機能が無料で利用できますが、月20回までの制限があり、無制限で使用するには有料プラン(月額約1,500円)への加入が必要です。また、AIが生成した内容は必ず確認し、必要に応じて編集することをお勧めします。
7. セキュリティ意識の高まり:放置プラグイン問題への対応
2023年には、「放置プラグイン(Abandoned Plugins)」と呼ばれるセキュリティ問題への認識が高まりました。Patchstackのレポートによると、2023年に827のプラグインとテーマが「放置状態」として報告され、そのうち481がWordPress公式リポジトリから削除されています。
放置プラグインの危険性
「放置プラグイン」とは、長期間更新されておらず、開発者によるサポートが停止しているプラグインを指します。これらは以下のようなリスクをもたらします:
- 未修正の脆弱性:新たな脆弱性が発見されても修正されない
- 互換性問題:WordPress本体の更新による不具合
- セキュリティ侵害:サイトへの不正アクセスやデータ漏洩のリスク
初心者向けの対策
初心者が取るべきセキュリティ対策として、以下のポイントが重要です:
- 定期的なプラグイン確認:インストール済みプラグインの最終更新日を確認
- 不要プラグインの削除:使用していないプラグインは無効化・削除
- 信頼性の確認:新規プラグインの導入時は更新頻度やサポート状況をチェック
- 定期的な更新:WordPress本体とプラグイン・テーマを定期的に更新
WordPress 6.5で導入された「プラグイン依存関係」機能も、セキュリティと安定性の向上に貢献しています。
今後のWordPressはどうなる?将来の展望
2023年〜2024年の変化を踏まえ、今後のWordPressはどのように進化していくのでしょうか?
Gutenbergの継続的な発展
Gutenbergプロジェクトは4つのフェーズで進められています:
- フェーズ1:ブロックエディタ(完了)
- フェーズ2:フルサイトエディティング(完了)
- フェーズ3:コラボレーション(現在進行中)
- フェーズ4:多言語サポート(将来計画)
現在はフェーズ3の「コラボレーション」に向けた機能開発が進んでおり、複数ユーザーによるリアルタイム編集や、より高度なワークフロー管理機能などが期待されています。
メジャーバージョンの見通し
WordPress公式のロードマップによれば、今後のメジャーバージョンは以下のような予定です:
- WordPress 6.9:2026年頃(暫定)
- WordPress 7.0:2027年頃(暫定)
これは従来の年3回のメジャーリリースから、年1回のペースへと変更されることを意味します。より大きな変更を含む、安定したバージョンアップの方向に進むと考えられています。
初心者に優しい進化の継続
これまでの傾向から、今後もWordPressは以下のような方向性で進化すると予想されます:
- 視覚的編集の拡充:より直感的なインターフェースの開発
- AIとの統合深化:コンテンツ作成だけでなく、サイト管理やカスタマイズにもAIの活用が進む
- パフォーマンスの継続的改善:さらなる表示速度の向上と最適化
- セキュリティ強化:自動化されたセキュリティチェックや対策の充実
- コーディング不要のカスタマイズ:より多くの高度な機能が専門知識なしで実装可能に
これらの進化により、WordPressはより多くの初心者にとって使いやすいプラットフォームへと進化し続けるでしょう。
初めてのWordPress:2024年に始めるなら知っておくべきこと
これからWordPressを始める方のために、2023年~2024年の変化を踏まえた初心者向けアドバイスをまとめました。
テーマ選択の新基準
- ブロックテーマを優先:フルサイトエディタなど最新機能を活用するにはブロックテーマがおすすめ
- レスポンシブデザイン:モバイル対応は必須条件
- 更新頻度の確認:定期的に更新されているテーマを選択
- シンプルから始める:初めは機能が少なめのシンプルなテーマから始めるとカスタマイズが楽
プラグイン選びの注意点
- 必要最小限に:多すぎるプラグインはサイト速度低下やセキュリティリスクの原因に
- 人気・評価・更新頻度をチェック:多くのユーザーに支持され、定期的に更新されているものを選ぶ
- 互換性の確認:使用しているWordPressバージョン・テーマとの互換性を確認
- サポート対応の確認:サポートフォーラムでの対応状況をチェック
学習リソースの活用
2024年時点でWordPressを学ぶなら、以下のリソースが特に役立ちます:
- WordPress.org公式ドキュメント:最新の機能や使い方の解説
- WordPress公式YouTubeチャンネル:ビジュアルで分かりやすいチュートリアル
- Learn WordPress:WordPress.orgが提供する無料のオンラインコース
- WordPress Meetup:地域ごとのコミュニティ勉強会
最新の情報を得ることで、古いチュートリアルに従って遠回りすることなく、効率的に学習できます。
まとめ:変化を活かしてより良いサイト作りを
2023年から2024年にかけて、WordPressは大きな進化を遂げてきました。フルサイトエディタの完全実装、フォントライブラリ、パフォーマンスの改善、Block Bindings APIなど、サイト制作と管理を根本から変える重要な変更が行われています。
これらの変化は、特に技術的知識が少ない初心者にとって朗報です。より少ないコーディングで、より多くのことが実現できるようになりました。同時に、セキュリティ面での意識向上も促されています。
WordPressを最大限に活用するためには:
- 常に最新バージョンに更新する
- 可能な限りブロックテーマを活用する
- プラグインは必要最小限に抑え、定期的に更新・見直す
- 新機能の基本を理解し、サイト管理に活かす
- 継続的に学習し、最新動向をフォローする
WordPressの変化は今後も続きます。しかし、これらの変更の多くは、初心者にとってより使いやすく、より多くの可能性を提供するためのものです。変化に戸惑うのではなく、新しい機能をうまく活用して、より良いウェブサイト作りを目指しましょう。
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