「まずは無料のチャットボットで試したい」——とても正しい考え方です。実際、無料プラグインでもチャット画面の設置までなら数十分で到達できます。
ただし、実際に無料プラグインを導入・検証してみると、「無料でできること」と「有料の領域」の線引きがはっきり見えてきました。この記事では、無料で使える代表的な5つのツールと、無料版の限界がどこに来るのかを、検証結果ベースで正直にお伝えします。
無料で使えるWordPressチャットボット5選【比較表】
| ツール | 形態 | 無料でできること | 自社情報への回答 |
|---|---|---|---|
| AI Engine | プラグイン | AIチャット設置・表示中ページの文脈注入(要APIキー) | Pro版で本格RAG($79/年〜) |
| Kognetiks Chatbot | プラグイン | AIチャット設置+サイト内容の簡易参照(要APIキー) | △(簡易検索ベース) |
| WPBot | プラグイン | シナリオ型FAQ・AI接続も可 | △(上位版で拡張) |
| Tidio | タグ埋め込み | 有人チャット+簡易ボットの無料枠 | △(AI回答は上位プラン) |
| Collect.chat | タグ埋め込み | 選択肢式ボット(AIではない) | —(シナリオ型) |
共通のパターンが見えるはずです。「設置」は無料、「自社の情報に正確に答えること」は有料の領域——どのツールもここで線が引かれています。

【検証】AI Engine 無料版を実際に入れてみた
無料プラグインの代表格 AI Engine を、当社の検証用WordPressに実際にインストールしてみました。
結論から言うと、セットアップは簡単です。プラグインをインストールし、OpenAIのAPIキーを設定画面に貼り付ければ、チャットボットが動き始めます。モデルも最新のものまで選択でき、無料版でここまで動くのは素直に優秀です。

一方で、実際に触って分かった注意点が3つあります。
1つ目は画面の日英混在。設定画面は「Environments for AI」など英語表記が多く残り、チャット画面の初期文言も「Hi! How can I help you?」と英語です。日本語サイトで使うには、文言・見た目の調整を一通り自分でやる必要があります。

2つ目はAPIキーと従量課金の管理が自分持ちであること。OpenAIのアカウント開設・クレジットカード登録・残高管理はすべて自己責任です。残高が切れればチャットは黙って止まります。
3つ目が最大のポイントで、自社の情報を覚えさせる機能(ナレッジ登録・埋め込み)はPro版($79/年〜)の領域だということ。無料版のチャットは「素のChatGPT」なので、一般知識には流暢に答えますが、あなたの会社の料金・サービス・営業時間は知りません。ビジネスサイトの接客に使うなら、ここが決定的な壁になります。
公平に書くと:Pro版のRAGは「本格派」で、しかも安い
AI Engineを深掘り調査したので、公平にPro版の実力にも触れておきます。Pro版($79/年〜)の「Embeddings」機能は、サイト内の投稿・固定ページ・PDFをベクトルデータ化して検索する本格的なRAG(検索拡張生成)です。ベクトルの保存先にWordPress内部のデータベースを選べば追加インフラ費用はゼロ。ページの公開・更新に合わせた自動同期(Auto-Sync)や、AIがどの資料を根拠に答えたかを追跡できる会話ログまで備えています。
コストも驚異的で、小規模サイトならライセンス+API実費で年1万円台から構築できる計算です。道具立てとしては市場で最高水準のコストパフォーマンスと言っていいでしょう。
ただし、その安さには前提があります。設定UIは英語中心で、類似度スコア(Min Score)・取得件数・コンテキスト長といった検索精度のパラメータ調整を自分で回す必要があります。精度が出ないときはログを読んで原因を切り分ける、APIのエラーや残高も自分で管理する——つまり「エンジニアの仕事」が運用に組み込まれます。技術者にとっては最有力候補、そうでない方には推奨しづらい、というのが実際に触ったうえでの結論です。
そしてもう1つ、見落とされがちな本質があります。RAGの仕組みが揃うことと、正確に答えることは別問題だということです。資料の整え方や検索の調整が甘いと、根拠が見つからない質問に対してAIがもっともらしい嘘(ハルシネーション)で埋めてしまう——ビジネス利用で本当に怖いのはここです。回答に必ず根拠(出典)を示す・根拠がなければ推測で答えず正直に人へつなぐ、という「嘘を抑える設計」と検証まで含めて、初めて接客に使える品質になります。AI Engine Proにはその材料は揃っていますが、この設計と検証は使う側の仕事として残ります。
無料版でも使える小ワザ:「表示中ページ」の文脈注入
補足として、AI Engineの無料版にも、訪問者がいま見ているページの本文をAIに読ませて答えさせる仕組み(プロンプトへの {CONTENT} 注入)があります。特定の記事の内容について答える「ページ専属ボット」なら無料で作れるということです。ただし参照できるのはそのページ1枚だけで、料金ページの内容をブログ記事上で答える、といったサイト横断の回答はできません。
その他4ツールの無料枠と限界
Kognetiks Chatbotは、サイト内のコンテンツを参照して回答する機能を無料で持つのが特徴です(要APIキー)。ただし参照はキーワード検索ベースの簡易的なもので、質問の言い換えに弱く、精度を求める用途には調整が必要です。UIは英語中心です。
WPBotは選択肢を押して進むシナリオ型が基本で、無料でもFAQボタン形式のボットが作れます。AI接続や高度な機能は有料版です。シナリオ型は「想定した質問」には確実に答えられますが、想定外の聞かれ方には対応できません。
Tidioはタグ埋め込み型のSaaSで、無料枠では有人チャットと簡易ボットが使えます。海外製で管理画面は英語寄り、AI回答(Lyro)は上位プランです。
Collect.chatはアンケートフォームのような選択肢式ボットで、そもそも生成AIではありません。月間の回答数に無料枠の上限があります。資料請求フォームの代わりのような用途なら十分です。
実話:無料→有料→それでも満足できず「自作」した人
当社のお客様の周辺で、実際にあった話です。無料ツールで始めたものの回答の質に満足できず、有料ツールに切り替え、それでも「自社の質問に思ったように答えない」壁を越えられず、最終的にGoogleのチャットボット開発ツールで自作する道を選んだ方がいます。
開発力があればそれも一つの答えです。ただ、多くの会社にとって現実的なのは、途中のツール選びで消耗する前に「自社の情報に答えさせたいのか」を最初に見極めることです。そこが目的なら、無料ツールの階段を一段ずつ登るより、最初からその目的のために設計されたRAG型を検討したほうが、時間もお金も節約になります。
無料版の3つの共通限界(まとめ)
5ツールを横断すると、無料版の限界は次の3つに集約されます。
- 自社の情報に正確に答えられない(ナレッジ登録・RAGは有料の領域)
- APIキー・課金・エラーの管理が自分持ち(AI型の場合)
- 日本語の初期設定・サポートがない(海外製が中心のため)
逆に言えば、「見た目のチャット窓が欲しいだけ」「選択肢式のFAQで十分」なら無料で足ります。問い合わせ対応を任せたい・取りこぼしを減らしたいなら、有料の領域が本体です。
よくある質問
Q. 完全無料でAIチャットボットを運用できますか?
プラグイン自体が無料でも、AI型はOpenAI等のAPI従量課金が別途かかります(小規模なら月数百円〜)。「完全無料」で成立するのは、AIを使わないシナリオ型ボットまでです。
Q. 無料版で自社の情報に答えさせる方法はありませんか?
2つの簡易的な方法があります。①システムプロンプトに会社情報を直接書き込む(書ける量に限りがあり、更新のたびに手作業)②AI Engineの「表示中ページの文脈注入」のように、開いているページの本文だけ読ませる(そのページ限定)。いずれも部分的な対処で、サイト全体を横断して正確に答えるには、ベクトル検索を使うRAG(各ツールの有料版、または専用サービス)が必要です。
Q. 無料から有料ツールへの乗り換えは大変ですか?
チャットボット自体の入れ替えは難しくありません(プラグインの停止と導入)。大変なのは、蓄積した会話履歴やFAQ設定が引き継げないことです。本運用を見据えるなら、最初の選定で「最終形」を決めておくのがおすすめです。
まとめ:無料で試す価値はある。ただし「目的」を先に決める
無料プラグインは「チャットボットがあるサイトの感触」を掴むには十分です。まず触ってみるのは良い選択です。そのうえで、自社の情報に出典付きで正確に答えさせたい・答えられない質問は人に引き継ぎたいのであれば、それは最初から有料RAG型の領域です。RAG型の中でも、ハルシネーション対策の設計・検証まで自分で作り込める技術者ならAI Engine Proが最有力候補、導入も精度調整も日本語で任せたいなら導入代行型のサービス——と、ここでも「自分でやるか、任せるか」で道が分かれます。
どのツールがどの領域をカバーしているかは、比較記事にまとめています。
▼ 【2026年版】WordPress対応AIチャットボットおすすめ7選|料金と選び方
▼ ChatGPTをWordPressサイトに連携させる方法4選|プラグイン・API・埋め込みの違い
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