埼玉県川越市を拠点にWordPressのカスタマイズやプラグイン開発を行っている、矢部@Edel Heartsです。

2026年4月にCloudflareが発表したCMS「EmDash(エムダッシュ)」が、9月28日に1.0(安定版)になりました。「WordPressの精神的後継」とも呼ばれるこのCMSを、当社は4月の初期版で一度試しています。今回、最新の1.1.0をもう一度ローカル環境で動かし、半年で何が変わったのか、WordPressと比べてどうなのかを確かめました。

結論から言うと、EmDashは1.0で「試作」から「本番でも使える前提のCMS」になりました。管理画面はほぼ日本語になり、WordPressからのインポート機能も備わっています。一方で、ログインはパスキーが前提、プラグインの仕組みもWordPressとは別物です。今回の検証から見ると、今のWordPressサイトを急いで乗り換える理由はまだ少なく、新しく作る小さめのサイトや、技術者が管理するサイトで検討する段階です。

この記事は2026年10月6日時点の情報です(検証したのはEmDash 1.1.0)。EmDashは今も短い間隔で更新されています。

また、当社ではEmDashで実際にサイトを作り、公開しました。EmDash 日本語ガイドは、EmDash 1.3.1をCloudflare Workersで動かしているサイトです。公開までの手順や、実際に動かして分かったことをまとめています。

EmDash(エムダッシュ)とは?

EmDashは、Cloudflareが2026年4月1日に発表したオープンソースのCMSです。PHPで動くWordPressに対し、EmDashはTypeScriptとAstro(ウェブサイトを作るための仕組み)で作られていて、CloudflareのサーバーやNode.jsのサーバーで動きます。ライセンスはMITで、無料で使えます。

WordPressが長年プラグインで補ってきたSEOの設定やリダイレクト、カスタム投稿タイプのような機能を、最初から本体に入れているのが特徴です。なお、記号の「—(エムダッシュ)」とは関係なく、名前だけが同じです。

EmDash 1.0で何が変わった?

Cloudflareの発表と、当社で4月と10月に動かした結果をまとめると、主な変化は次のとおりです。

項目 2026年4月(初期版) 2026年10月(1.1.0)
位置づけ 試作に近い初期版(0.1系) 1.0で安定版に。その後も毎週のように更新
動かせる場所 Cloudflare中心 Cloudflare、またはNode.jsのサーバー(作るときに選ぶ)
管理画面の言語 英語 ほぼ日本語(25言語に翻訳、一部は英語のまま)
プラグイン 独立した仕組み 公開・発見のためのプラグインレジストリと、プラグインを隔離して動かす仕組み
WordPressからの移行 — 管理画面にインポート機能(3通りの方法)
AI連携 — MCPサーバーやAPIなど、AIエージェントから操作する仕組みを内蔵

EmDash 1.1.0を実際に動かしてみた

ターミナルで作成用のコマンドを実行し、テンプレート(今回はブログ)と動かす場所(今回はNode.js)を選ぶと、数十秒で準備が終わりました。ここは4月と同じく手軽です。

ログインはパスキーが前提

初期設定は「サイト」「アカウント」「ログイン」の3段階です。驚いたのは、アカウントを作る画面にパスワードの欄がないことでした。3段階目でパスキー(指紋や顔認証、端末のPINで本人確認する仕組み)を作らないと、初期設定を終えられません。

EmDashの初期設定の3つ目の画面。パスキーの作成を求められ、パスワードを入力する欄はない

ログイン画面の選択肢は「パスキー」と「メールのリンク」でした。4月の初期版ではGitHubやGoogleでのログインも並んでいましたが、今回の初期状態では表示されませんでした。パスワードを使わないので、パスワードの使い回しや総当たり攻撃の心配がない反面、パスキーに慣れていない担当者がいる会社では、最初に操作の説明が必要になります。

管理画面はほぼ日本語に

EmDash 1.1.0の管理画面のダッシュボード。メニューはほぼ日本語で、CalendarやPostsなど一部が英語のまま

4月は英語だった管理画面が、ほぼ日本語になっていました。「Calendar」「Pages」「Posts」など一部は英語のままで、パスキーの説明画面も英語でした。メニューには、コメント、メニュー、リダイレクト、ウィジェット、執筆者、コンテンツタイプ、プラグイン、インポートが並び、設定画面にはAPIトークン、メールの送信確認、バックアップ、パスキーの管理がありました。

WordPressからのインポート機能がある

EmDashの「WordPressからインポート」画面。移行キー、WordPressサイトのURL、エクスポートファイルのアップロードの3つの方法が並んでいる

管理画面に「WordPressからインポート」があり、投稿・固定ページ・カスタム投稿タイプを取り込めると書かれています。方法は3通りです。

  • WordPress側に「EmDash Exporter」というプラグインを入れて、移行用のキーで接続する
  • WordPressサイトのURLを入力して、使える方法を調べてもらう
  • WordPressの「ツール」→「エクスポート」で書き出したファイル(XML)をアップロードする

今回は画面の確認までで、実際のサイトの取り込みは試していません。WordPressのプラグインで作った機能(フォーム、予約、会員など)は移行の対象外になるはずなので、取り込めるのは「記事やページの中身」と考えておくのが安全です。

プラグインは「隔離して動かす」仕組み

Cloudflareの発表によると、EmDash 1.0のプラグインは隔離された環境で動き、許可がない限りサイトの記事やメディア、ユーザー、秘密情報にアクセスできません。WordPressでは、1つのプラグインの脆弱性がサイト全体の乗っ取りにつながることがあるので、ここは大きな違いです。

ただし、作成用のコマンドの説明によると、この隔離の仕組みをCloudflare上で使うには、Workersの有料プランが必要です。今回のNode.jsの構成では隔離の仕組みは使わず、プラグイン画面は初期状態で0件でした。WordPressのように「探して入れればすぐ使える」数のプラグインがそろうのは、これからです。

WordPressとEmDashの違い

観点 WordPress EmDash(1.1.0)
開発元 コミュニティ Cloudflare(オープンソース)
作り PHP・MySQL TypeScript・Astro
動かす場所 ほとんどのレンタルサーバー Cloudflare Workers、またはNode.jsのサーバー
ログイン ID・パスワード(プラグインで2段階認証など) パスキーが前提、メールのリンク
SEO・リダイレクトなど プラグインで追加することが多い 本体に入っている
プラグインの安全性 サイト全体にアクセスできる 隔離して動かせる(Cloudflareでは有料プラン)
テーマ・プラグインの数、情報量 非常に多い これから
日本語の情報・頼める会社 多い まだ少ない

EmDashの費用は?

EmDash本体は無料です(MITライセンス)。かかるのはサーバーの費用で、Cloudflareで動かすか、Node.jsが動くサーバーを用意するかで変わります。Cloudflareでプラグインの隔離実行を使う場合は、Workersの有料プランが必要です。一般的な共用のレンタルサーバー(PHPのみ)では動かせないので、今WordPressを置いているサーバーにそのまま入れられるとは限りません。

当社がEmDash 1.3.1のブログ用テンプレートをCloudflare Workersで公開したときは、表示1回あたりの処理時間(CPU時間)を実測すると、多くのページで無料プランの上限(10ms)を超えていました。そのため、プラグインの隔離実行を使わなくても、Workersの有料プラン(月5ドル〜)が必要と判断しました。測った数字はEmDash を Cloudflare Workers に公開するまでに載せています。

ここまでのまとめ

  • EmDashは9月28日に1.0になり、その後も短い間隔で更新されている
  • 管理画面はほぼ日本語。ログインはパスキーが前提
  • WordPressからのインポート機能があるが、プラグインで作った機能は移らないと考えるのが安全
  • プラグインの隔離はWordPressにない強み。ただしプラグインの数や情報量はこれから

WordPressからEmDashに乗り換えるべき?判断材料

今回の検証を踏まえた、判断の目安です。

EmDashを検討してよいケース WordPressのままが安心なケース
新しく作る、記事やページが中心の小さめのサイト フォーム、予約、会員、ECなどをプラグインで動かしているサイト
Cloudflareをすでに使っている、技術者が管理する 社内の担当者が管理し、困ったときに検索して解決したい
パスワードを使わない運用に切り替えたい 今のレンタルサーバーのまま運用したい
プラグインの脆弱性のリスクを構造的に減らしたい 頼める制作会社や保守会社の選択肢を多く持っておきたい

EmDashはまだ更新の頻度が高く、仕様が動いている段階です。今のWordPressサイトで困っていないなら、急いで乗り換える必要はありません。WordPressの不安が「プラグインの脆弱性」や「パスワードの漏えい」なら、まずWordPressのままで不正ログイン対策やプラグインの整理から始めるのが現実的です。

2026年4月に初期版を試したときの記録

ここからは、4月に初期版(0.1系)をローカル環境で試したときの記録です。半年での変化が分かるよう、当時の内容を残しています。

ローカル構築:Local (by Flywheel) に匹敵する手軽さ

ターミナルでコマンドを実行してから、ローカルサーバーが立ち上がるまでのスピードは、WordPressのローカル環境として定番の「Local」と同じくらいの手軽さでした。

ターミナルによるインストールコマンドイメージ

サイトタイトルを入力する画面

設計思想の差が見えるサイドメニュー

WordPressのサイドメニューは、プラグインを入れるたびにメニューが増え、整理が大変になりがちです。EmDashは初期状態で「Content Types」や「Webhooks」といった拡張の基盤が整理して配置されていました。

EmDashの管理画面サイドメニュー(2026年4月の初期版)

WordPressなら「プラグイン必須」の機能が標準装備

  • Redirects:404エラーの監視やリダイレクト設定が標準メニューに
  • Widgets・Sections:サイドバーや再利用ブロックの管理が分かりやすく整理されている
  • Content Types:カスタム投稿タイプの定義が標準機能。下書き・リビジョン・検索・SEOといった機能をチェック1つで切り替えられる

EmDashのContent Types設定画面(2026年4月の初期版)

ログイン認証に見る「技術者向け」のメッセージ

当時のログイン画面には、パスキー、GitHub、Googleが並んでいました。GitHubが標準で用意されていたことに、技術者が心地よく使える設計思想を感じました。パスキーを勧める姿勢は、10月の1.1.0ではさらに強まり、パスキーが前提になっています。

ログイン画面(2026年4月の初期版)。パスキー、GitHub、Googleが並ぶ

【独自考察】EmDashが広まるための条件

EmDashが成功するかどうかは、「利用者とコントリビューター(開発者)をどれだけ集められるか」にかかっていると考えています。WordPressが発展したのは、世界中に「これでサイトを作りたい」という利用者がいて、それに応える魅力的なテーマやプラグインを作る開発者がいる、巨大なエコシステムがあったからです。TypeScriptでのモダンな開発体験がどれだけ開発者を惹きつけるか、「困ったときに検索すれば解決策がある」という情報の厚みを作れるか。1.0で始まったプラグインのレジストリや多言語化は、その条件に向けた一歩だと言えます。

よくある質問

Q. EmDashは無料ですか?

本体は無料です(MITライセンス)。サーバーの費用は別にかかり、Cloudflareでプラグインの隔離実行を使う場合はWorkersの有料プランが必要です。

Q. EmDashは日本語で使えますか?

1.1.0では、管理画面のほとんどが日本語で表示されました。一部のメニューやパスキーの説明は英語のままでした。

Q. WordPressのサイトをEmDashに移せますか?

管理画面に、WordPressから投稿・固定ページ・カスタム投稿タイプを取り込む機能があります。ただし、WordPressのプラグインで作った機能(フォーム、予約、会員など)は、EmDash側で作り直しが必要になると考えてください。

Q. WordPressはもう古いのでしょうか?

そうは考えていません。WordPressも開発が続いていて、7.2ではセキュリティや管理画面の改善が予定されています。WordPressの今後はWordPress 7.2の新機能まとめや、WordPressはオワコンなのか?で解説しています。

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Edel HeartsはWordPress専門の開発会社ですが、新しい技術もフラットな目線で追っています。「WordPressのままでいくべきか、新しいCMSを検討すべきか」といった技術選定のご相談は、WordPress顧問エンジニアサービスで承っています。今のサイトの状況を伺い、貴社にとって無理のない選択肢を一緒に考えます。

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更新履歴

  • 2026年4月2日:公開(初期版0.1系をローカル環境で検証)
  • 2026年10月6日:EmDash 1.0(9月28日)の公開を受けて全面的に書き直し。1.1.0をローカル環境で動かし、パスキー必須のログイン、日本語の管理画面、WordPressからのインポート、プラグインの仕組みを確認。4月の検証は「初期版を試したときの記録」として残した
  • 2026年10月21日:EmDashで作って公開した「EmDash 日本語ガイド」へのリンクと、Cloudflare Workersで公開したときの処理時間の実測(無料プランの上限を超えた)を追記

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この記事を書いた人

矢部 敦

矢部 敦合同会社Edel Hearts 代表

WordPress専門の開発会社を経営。プラグイン開発・カスタマイズ・保守を専門とし、18時間におよぶUdemyのWordPress講座を開講。出典付きで回答するAIチャットボット「Edel AI Hybrid Chat」開発者。著書『WordPress はじめての最小プラグイン』(Kindle)。本ブログの記事は、実際の開発・運用で得た一次情報をもとに執筆しています。会社情報はこちら

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