WordPress 7.1が2026年8月に公開されてから1か月。次のメジャーバージョンWordPress 7.2の準備が、すでに動き出しています。「7.2はいつ出るのか」「何が変わるのか」「7.1で懲りたので今度は慎重に上げたい」という方に向けて、公式に決まっていることと、まだ議論中のことを分けて整理します。

結論から言うと、WordPress 7.2の正式版は2026年12月9日(水)前後に公開される予定で、Beta 1は10月20〜22日、RC1は11月17〜19日です。確定しているのはこのスケジュールと「新しいデフォルトテーマIpsumが同梱される方向」までで、Secrets APIやAI向けのAbilities拡張は提案・開発中の段階です。年内3つ目のメジャーリリースにあたり、小規模なリリースチームで進められています。

この記事は2026年9月18日時点の情報です。Beta 1(10月20〜22日)の公開時点で、確定した新機能に差し替えて更新します。

WordPress 7.2はいつリリースされる?公式スケジュール

Make WordPress Coreで公開されている7.2のスケジュールは次のとおりです。公式表記は「10月20〜22日」のような3日間の枠になっているので、日本時間ではさらに1日ずれる可能性があります。最終リリースは提案時点で「12月9日(水)」、公式ロードマップでは「12月10日」と表記されており、いずれも12月8〜10日の枠の中です。

段階 公式の枠(UTC) 日本時間の目安
Beta 1 10月20〜22日 10月21〜23日ごろ
Beta 2 10月27〜29日 10月28〜30日ごろ
Beta 3 11月3〜5日 11月4〜6日ごろ
Beta 4 11月10〜12日 11月11〜13日ごろ
RC 1(リリース候補) 11月17〜19日 11月18〜20日ごろ
RC 2 11月24〜26日 11月25〜27日ごろ
RC 3 12月1〜3日 12月2〜4日ごろ
ドライラン 12月7〜9日 12月8〜10日ごろ
正式版 7.2 12月8〜10日(予定日は12月9日) 12月9〜11日ごろ

リリースリードはMatt Mullenweg氏、リリース調整はDavid Baumwald氏、テックリードはGeorge Mamadashvili氏とPeter Wilson氏です。今回は「より小さく、焦点を絞ったリリースチーム」で進める方針が発表されており、応募者が枠を大きく上回ったため選考が行われました。なお、RC1の時期に次の7.3のリリースチーム募集が始まる予定ですが、7.3の日程自体はまだ決まっていません。

WordPressのロードマップでは、新機能は正式リリースの約1か月前に凍結され、以後は品質とパフォーマンスの改善に専念するとされています。つまり、7.2に何が入るかが実質的に決まるのはBeta 1からRC1にかけての期間です。

WordPress 7.2で何が変わる?確定・提案中・開発中の仕分け

ここが一番大事な点です。2026年9月時点で「7.2の新機能」として断言できるものはほとんどありません。公式の一次情報をもとに、状態を分けて並べます。

確定したスケジュールと、まだ動いている新機能候補を仕分けるイメージ
項目 状態(9月18日時点) 影響を受けやすい人
リリーススケジュール(Beta〜正式版) 確定 全員
新デフォルトテーマ「Ipsum」の同梱 方向は確定・公開テスト中(開発レビューはこれから) デフォルトテーマを使う人、テーマ開発者
Secrets API(APIキーの暗号化保存) 提案中(Beta 1が実装の実質的な期限。UIは7.3へ) プラグイン開発者、AI連携を使うサイト
Abilities APIの拡張(読み取り系3種のCore統合) 7.1から延期・7.2以降の目標 AIエージェント連携をしたい開発者
コンテンツの作成・更新・削除のAbilities AIチームで開発中・7.2目標(方向は未固定) 同上
リアルタイム共同編集 時期未定(7.0で見送り、7.1にも未搭載) 複数人で編集する企業サイト
投稿エディターの常時iframe化 7.1で導入済み・継続 管理画面をカスタマイズしているプラグイン
ブラウザ側での画像処理 7.1で導入済み・改善が続く見込み 画像を多く扱うサイト

新デフォルトテーマは「Twenty Twenty-Seven」ではなく「Ipsum」

2026年3月に「Twenty Twenty-Seven」として開発が始まったデフォルトテーマは、9月16日に「Ipsum(イプサム)」という名前で発表されました。年号で名付ける16年続いた慣習をやめ、今後は「暦ではなく、デザインが求めるときに名前を変える」方針です。Ipsumはブログ体験を軸にした「白いキャンバス」を掲げるミニマルなテーマで、複数のスタイルバリエーションを持ち、WCAG AAレベルのアクセシビリティに対応します。当初はより装飾的な「Mētis」という案があり、そこから引き算した経緯も公開されています。

ただし公式の発表文には、「デザインは完了したが、開発レビューはこれから」と明記されています。9月9日のリリースチーム発表ではまだ「Twenty Twenty-Sevenチーム」と書かれていたほどで、名称も含めて動いている最中です。既存サイトのテーマが勝手に置き換わることはないので、運営者への直接の影響は「新規サイトを作るときの選択肢が増える」程度です。

Secrets API:APIキーの保存方法が変わるかもしれない

8月25日に、WordPress 7.2向けとしてSecrets APIが提案されました。現在のWordPressには、外部サービスのAPIキーやトークンを安全に保存する標準の仕組みがなく、多くのプラグインが設定テーブルに平文で保存しています。提案では、暗号化した保存と取得の関数群(保存・取得・削除・既存オプションからの取り込み)とWP-CLI対応を7.2に入れ、管理画面のUIは7.3に回す計画です。フィードバック募集は9月中旬まで、Beta 1が実装の実質的な締め切りとされています。

AIチャットボットやLINE連携など、APIキーを扱うプラグインが増えている今、地味ですが影響の大きい変更です。提案の中身と、導入前に開発者ができる対策はSecrets APIの解説記事にまとめています。当社もOpenAIやGeminiのAPIキーを扱うプラグインを開発しているので、Beta 1で入るかどうかを注視しています。

Abilities API:AIがWordPressを操作するための土台

Abilities APIは、WordPressの機能を「人にもAIにも分かる形」で登録し、外部から発見・呼び出しできるようにする仕組みで、6.9以降の本体に入っています。7月2日の提案では、サイト設定・投稿・ユーザーを読み取る3つのAbilityを本体に統合する案が出されましたが、「まだ採用実績と成長の兆候が十分でない」としてリリース側の判断で7.1から見送られ、AIプラグインでのテストを経て7.2以降を目指すことになりました。AIチームでは、さらにコンテンツの作成・更新・削除まで扱う方向も議論されていますが、こちらも方向は固まっていません。

この仕組みが本体に入ると、Claude DesktopやCursorのようなAIツールからWordPressを操作する構成が「プラグインの実験」から「標準機能」に近づきます。当社ではすでにローカルのWordPress 7.1でMCP Adapterを使い、独自のAbilityを登録してAIから下書きを作らせる検証を済ませています。手順と気づいた点はMCP Adapterの検証記事をご覧ください。

リアルタイム共同編集は7.2でも未確定

Googleドキュメントのように複数人が同時に編集できる機能は、7.0の公開2週間前に「競合状態、サーバー負荷、メモリ効率」などの懸念で見送られ、7.1にも入りませんでした。公式の続報では時期が明記されておらず、7.2で入ると期待して計画を立てるのは危険です。公式ロードマップ上はGutenbergのフェーズ3(共同編集とワークフロー)が継続中、という位置づけにとどまります。

7.1で起きたことから、7.2で気をつけること

7.2に何が入るかより、運営者にとって大事なのは「上げたときに何が起きるか」です。参考になるのが、つい1か月前の7.1で実際に起きたことです。

7.1では、エディターの常時iframe化とフックの内部変更によって、WP RocketやACFなど有名プラグインで致命的なエラーや表示の変化が起きました。詳しくはWordPress 7.1の不具合まとめに書いています。そして9月17日に出た修正版の7.1.1は、事前には「バグ修正のみ」と告知されていたのに、公開当日にセキュリティ修正11件を含むリリースに変わりました。当社はその日のうちに7.1.1の解説記事を訂正しています。

ここから言えることは2つです。1つは、メジャーバージョンの内容は正式版の当日まで動くということ。この記事で「提案中」「開発中」と書いた項目は、Beta 1で入ることも、RC1で外れることも普通にあります。もう1つは、セキュリティ修正はメジャーバージョンとは別に、今使っている系統にも配信されるということ。7.1.1のセキュリティ修正は7.0系にも届き、当社のサイトは9月18日の朝に7.0.5へ自動更新されていました。「7.2を待つ」ことと「セキュリティ修正を当てる」ことは別の話です。

運営者が今のうちにやっておくこと

12月の7.2公開に向けて、9〜11月にやっておくと安全な準備です。

  • 7.1.1(または7.0.5以降のセキュリティ修正版)を適用しておく。7.2を待つ間も、脆弱性は待ってくれません
  • 使っていないプラグインとテーマを削除する。7.1で問題を起こしたのは、更新が止まった古いプラグインが中心でした
  • PHPのバージョンを確認する。サイトヘルスで8.2以上になっているかを見ておくと、7.2でも同じ環境で検証できます。PHP 8.6の対応状況はPHP 8.6とWordPressの記事に整理しています
  • ステージング環境を用意する。Beta 1が出たら本番ではなくステージングで動かし、管理画面と公開側を一通り触るだけで、12月に慌てずに済みます
  • バックアップと「戻す手順」を確認する。安全なアップデート手順のとおり、戻せる状態を作ってから上げるのが基本です

当社のサイトは2026年9月時点で7.0.5のまま7.1系への移行準備中です。メジャーアップデートは公開後7週間ほど様子を見るのが当社の基準で、7.2についても12月の公開直後に上げることはしません。年末年始をまたぐので、2027年1月中旬以降に、プラグインの対応状況を見てからというのが現実的な目安になると考えています。

技術者向け:7.2で追っておきたい変更

ここからはテーマやプラグインを開発している方向けです。9月時点で追いかける価値があるのは次の3つです。

Secrets APIの関数設計。提案では、秘密情報を暗号化して保存する専用の関数群が示され、取得結果は平文の文字列ではなく専用のオブジェクトで返り、必要な瞬間だけ平文を取り出す設計になっています。暗号化を無効にするモードはなく、鍵のローテーションにも対応する案です。APIキーを設定テーブルに保存しているプラグインは、Beta 1で入った場合に備えて、キーの読み出し処理を1か所にまとめておくと移行が楽になります。

Abilities APIの登録方法。本体への統合が7.2に入るかどうかにかかわらず、独自のAbilityを登録する仕組み自体は6.9以降で使えます。権限チェックを必ず実装すること、公開するAbilityは読み取り系から始めることが、提案の議論でも繰り返し指摘されています。当社の検証では、認証なしのアクセスは拒否され、権限の低いユーザーでは実行が拒否されることを確認しました。

Ipsumのテーマ構造。GitHubのWordPress/ipsumリポジトリで公開されており、ブロックテーマの最新の書き方(theme.jsonのスタイルバリエーション、必要なときだけ表示するヘッダーやサイドバー)を学ぶ教材になります。7.1で入った画面サイズ別のレスポンシブスタイルがどう使われているかも参考になります。

AI関連では、WordPress AIチームが9月16日の週次まとめで、記事をMarkdown形式でAIに渡す「Markdown feeds」の実験や、MCP Adapterの公式ディレクトリ提出準備を報告しています。これらは7.2の本体機能ではなくAIプラグイン側の動きですが、7.2以降のWordPressがどこへ向かうかを示しています。詳しくはMarkdown feedsの解説記事AI時代のWordPressの将来性をご覧ください。

更新履歴

  • 2026年9月18日:初版公開(Beta 1公開前の情報。スケジュールは確定、新機能は提案・開発中の段階)

まとめ:7.2は12月。今は「上げる準備」をする時期

WordPress 7.2は2026年12月9日前後に公開予定で、Beta 1は10月20〜22日です。確定しているのはスケジュールと新デフォルトテーマIpsumの方向までで、Secrets APIやAbilities APIの拡張、リアルタイム共同編集は提案・開発中か時期未定です。7.1.1で告知と実態が変わった例があるとおり、内容は正式版まで動きます。この記事はBeta 1、RC1、正式版のタイミングで更新します。

「7.1にまだ上げていない」「7.2に向けてプラグインを棚卸ししたい」「毎回のアップデートを任せたい」という方は、更新の代行とバックアップ、問題時の復旧まで含めたWordPress保守サポートをご検討ください。制作会社の方で、7.2の変更が自社の案件に与える影響を相談できる相手が欲しい場合は、顧問エンジニアサービスで継続的に支援しています。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

矢部 敦

矢部 敦合同会社Edel Hearts 代表

WordPress専門の開発会社を経営。プラグイン開発・カスタマイズ・保守を専門とし、18時間におよぶUdemyのWordPress講座を開講。出典付きで回答するAIチャットボット「Edel AI Hybrid Chat」開発者。著書『WordPress はじめての最小プラグイン』(Kindle)。本ブログの記事は、実際の開発・運用で得た一次情報をもとに執筆しています。会社情報はこちら

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