WordPress 7.2では、新しいデフォルトテーマ「Ipsum(イプサム)」が同梱される予定です。「Twenty Twenty-◯◯」という年号の名前をやめた最初のデフォルトテーマでもあり、名前を見て「何が変わるの?」「今のサイトに影響はある?」と気になった方も多いと思います。
公式の発表は英語の情報がほとんどで、日本語サイトで使ったときにどう見えるかは、まだあまり書かれていません。そこで当社で、開発中のIpsumを日本語のブログとして実際に動かし、PCとスマホで表示を確かめました。
結論から言うと、Ipsumは「ブログを書く」ことに絞った、飾りの少ないブロックテーマです。日本語もそのまま表示できますが、2026年9月時点の開発版では、長音「ー」や小さい「ォ」が行の先頭に来ることがありました。これはCSSを1行足せば直せます。既存サイトのテーマが勝手にIpsumへ置き換わることはないので、今すぐ何かをする必要はありません。
この記事は2026年9月29日時点の開発版(公式リポジトリのコミットc738c485)で確かめた内容です。正式版では変わる可能性があります。7.2のベータ版が出た時点で検証し直し、追記します。
WordPressの新デフォルトテーマ「Ipsum」とは?
Ipsumは、2026年9月16日にWordPressのコア開発チームのHenrique Iamarino氏が発表した、WordPress 7.2に同梱予定のブロックテーマです。名前は、デザインの仮置きに使うダミー文章「lorem ipsum」から来ています。
公式の発表では、ブログを書く体験を中心に、使う人が自分のデザインへ育てていける「白紙のキャンバス」を目指すと説明されています。点線の下線などのさりげない装飾、複数の書体の組み合わせ、画像を含めたページ全体の印象を変えるスタイルが用意され、必要なときだけヘッダーやヒーロー、サイドバーを使う構成です。
開発の途中では、より装飾的な「Mētis(メティス)」という案がありました。そこからMatt Mullenweg氏との検討を経て、簡素なIpsumが選ばれた経緯が公開されています。Mētisは別のテーマとして残り、7.2には同梱しないとされています。「Mētisを改名したものがIpsum」ではない点に注意してください。
また、今後のデフォルトテーマは年号ではなく独自の名前を持ち、「暦ではなく、デザインが必要とするときに変える」方針になりました。毎年新しいテーマが出る、という前提ではなくなります。
開発版に入っているスタイルとパターンの数
当社が確認した開発版(2026年9月28日のコミット)には、次のファイルがありました。正式版の数ではない点と、パターンのファイル数が「挿入画面で選べるパターンの数」と同じではない点(内部用の非表示パターンも含むため)に注意してください。
| 項目 | 開発版での数 | 中身 |
|---|---|---|
| パターン(PHPファイル) | 30個 | 内部用の非表示パターンを含む |
| 配色のバリエーション | 7個 | Blue Hour、Sunrise、Morning、High Noon、Golden Hour、Evening、After Hours |
| 書体のバリエーション | 5個 | Archivo Condensed、Archivo、Besley、JetBrains Mono、STIX Two Text |
| 動作要件(README記載) | — | WordPress 7.1以上、PHP 7.4以上 |
同梱フォントは欧文の7書体で、日本語用のフォントは入っていません。これが日本語での見え方に関係してきます(後述)。
Twenty Twenty-Fiveとの違い
現在のデフォルトテーマTwenty Twenty-FiveもIpsumも、どちらもブロックテーマで、サイトエディターで見た目を変える前提です。「Ipsumでサイト全体を編集できるようになる」わけではありません。違いは、最初に何を重視しているかです。
| Twenty Twenty-Five | Ipsum(開発版) | |
|---|---|---|
| 名前の付け方 | 年号 | 独自の名前(年号をやめた) |
| 打ち出し方 | 多くのパターンとスタイルで、ブログからサービス紹介・商品・イベントまで幅広く作れる | ブログを始めるための、簡素な初期状態 |
| CSSの方針 | — | CSSを最小限にし、theme.jsonとグローバルスタイルで編集する設計が目標 |
| 日本語フォント | 同梱なし | 同梱なし |
「Twenty Twenty-Fiveは企業サイト向け、Ipsumはブログ向け」と言い切るのは正確ではありません。Twenty Twenty-Fiveにもブログ用のテンプレートがあります。また、Ipsumのほうが表示が速い、SEOに有利といった比較データは、まだどこからも出ていません。
Ipsumを日本語サイトで試して分かったこと
ここからが当社の検証です。ブラウザ上でWordPressを動かせるWordPress Playgroundを使い、サイト言語を日本語にしたWordPress 7.1.2にIpsumの開発版を入れました。和文と英数字が混ざる長めの見出しと本文、縦書きのブロックを含む記事を用意し、PC(幅1280px)とスマホ(幅390px)で表示を撮影し、ブラウザが実際に使っている書体や改行の設定も読み取っています。
結果をまとめると、次のとおりです。
| 確認したこと | 結果 |
|---|---|
| 日本語の表示 | 問題なく表示される |
| 書体 | 見出しも本文も「Inter」指定のみ。和文はOS標準のゴシック体で表示される |
| 行頭の禁則 | 長音「ー」や小さい「ォ」が行頭に来ることがある |
| 縦書き | グループブロックを縦書きにすると、そのとおり表示される |
| スマホ表示 | 横へのはみ出しなし。サイト名とキャッチフレーズは2行に折り返す |
| 文字の大きさ | 本文18px・行間1.6。記事タイトルはPCで35px、スマホで約27px |
| テーマの日本語訳 | まだ無い(翻訳ファイルが見つからないと表示された) |
長音「ー」や小さい「ォ」が行頭に来る
いちばん目についたのが、改行の位置です。PC幅の本文では「デフォルトテ」で行が終わり、次の行が長音「ー」から始まっていました。

スマホ幅では、記事タイトルが「デフ」で折り返され、次の行が小さい「ォ」から始まっていました。日本語の組版では、長音や小さい仮名、句読点を行頭に置かない「禁則処理」が一般的なので、日本語の読者には少し引っかかる見え方です。
原因は、Ipsumが改行のルールを細かく指定していないことです。ブラウザが読み取った設定はline-break: auto(ブラウザ任せ)で、この場合、長音や小さい仮名の前での改行が許されます。英語圏向けに作られたテーマではよくあることで、Ipsumだけの問題ではありません。
CSSを1行足すと直る
検証環境で、次の1行を追加して表示し直しました。
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1 |
body { line-break: strict; } |
すると、スマホのタイトルは「フォルト」がまとまって次の行へ送られ、PCの本文でも「テーマ」が行をまたがなくなりました。

サイトエディターの「スタイル」から追加CSSに書くか、子テーマのstyle.cssに書けば反映できます。日本語サイトでIpsumを使うなら、最初に入れておきたい設定です。
和文の書体はOS任せになる
Ipsumの書体指定は「Inter, sans-serif」だけで、日本語用の書体の指定がありません。そのため、和文はMacならヒラギノ、Windowsなら游ゴシックやメイリオといった、閲覧する端末の標準の書体で表示されます。読めないわけではありませんが、端末によって印象が変わります。
見た目をそろえたい場合は、サイトエディターの「スタイル」→「タイポグラフィ」で日本語の書体を追加するか、theme.jsonのフォント設定に和文の書体を加えます。同梱の書体はすべて欧文用なので、書体バリエーションを選び直しても、和文の見た目は端末の書体に左右されたままになる可能性があります。バリエーションを変えたら、和文の表示も確認してください。
縦書きはきちんと表示された
Ipsumのtheme.jsonでは縦書きの設定(writingMode)が有効になっていて、グループブロックの「縦書き」を選ぶと、そのとおりに表示されました。「令和8年9月29日」のような算用数字は横に寝た向きで並ぶため、数字を縦に立てたい場合は漢数字にするなどの工夫がいります。

スマホでも崩れない
幅390pxのスマホ表示でも、横にはみ出す要素はありませんでした。日本語のサイト名とキャッチフレーズは2行に折り返し、画面右下には検索ボタンが浮いて表示されます。サイト名が長い場合は、ヘッダーの見え方を確認しておくと安心です。

なお、スクリーンショットの日付が「9月 28, 2026」、カテゴリーが「Uncategorized」と英語式になっているのは、英語で作ったサイトを日本語に切り替えるという検証の手順によるものです。日本語で新しくインストールしたWordPressでは、日付の形式は「2026年9月28日」になります。
ここまでのまとめ:運営者が知っておくこと
- Ipsumは7.2に同梱予定の、ブログ向けの簡素なブロックテーマ(正式公開は2026年12月予定)
- WordPressを7.2に更新しても、今使っているテーマが勝手にIpsumへ変わることはない
- 日本語は表示できるが、開発版では長音や小さい仮名が行頭に来ることがある
- 日本語サイトで使うなら、改行ルール(line-break: strict)と和文の書体を最初に設定する
既存サイトへの影響は?Twenty系は使えなくなる?
WordPress本体の更新では、新しいデフォルトテーマが「追加」されることはあっても、有効なテーマが自動でIpsumに切り替わることはありません。追加と有効化は別の処理です。例外は、今のテーマが壊れて使えない状態になっている場合で、このときWordPressはインストール済みのデフォルトテーマに切り替えます。これは更新とは別の話です。
「Ipsumが出たら古いTwenty系は使えなくなる」という心配も不要です。WordPress本体に同梱されるテーマは直近3つに絞られていますが、同梱から外れることと保守の終了は別で、Twenty系の一斉サポート終了は発表されていません。
WordPress 7.2の予定
| 段階 | 予定日(2026年) |
|---|---|
| Beta 1 | 10月20〜22日 |
| RC 1 | 11月17〜19日 |
| 正式版 | 12月8〜10日(公式ロードマップでは12月10日) |
7.2全体の変更点はWordPress 7.2の新機能と更新前の注意点にまとめています。
技術者向け:開発版のIpsumを自分で試す方法
今回の検証は、WordPress PlaygroundのCLIとブループリント(初期設定を書いたJSON)で行いました。サイト言語の日本語化と、コミットを指定したIpsumのインストール・有効化までを自動化できます。本番サイトに触れずに、使い捨ての環境で確かめられるのが利点です。
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{ "preferredVersions": { "php": "8.3", "wp": "latest" }, "steps": [ { "step": "setSiteLanguage", "language": "ja" }, { "step": "installTheme", "themeData": { "resource": "url", "url": "https://github.com/WordPress/ipsum/archive/c738c485aecde29a6d9fd5e68f685a28b9a477e4.zip" }, "options": { "activate": true } } ] } |
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1 |
npx @wp-playground/cli@latest server --blueprint=bp.json --login |
コミットのハッシュを変えれば、別の時点の開発版と比べられます。PlaygroundのCLIやブループリントの基本はWordPress Playgroundの使い方の記事、AIからPlaygroundを操作する実験はWebMCPの検証記事で紹介しています。
スマホ表示を自動で撮影する場合は、ヘッドレスChromeのウィンドウ幅だけを390pxにすると、画面の右端が切れて写ることがありました。Puppeteerなどでビューポートとモバイル端末の指定をして撮るのが確実です。これは撮影側の問題で、Ipsumのはみ出しではありません。
開発状況は公式リポジトリ(WordPress/ipsum)で追えます。9月末時点では、暗い配色でヒーロー部分の文字が見えにくくなる問題(Issue #116)や、サイトエディターでブロックの復旧警告が出る問題の修正(PR #121)が進行中でした。公式発表はWCAG AAを満たす組み合わせを目指すとしていますが、全画面の検証が終わった段階ではありません。
よくある質問
Q. WordPressを7.2に更新すると、テーマがIpsumに変わりますか?
変わりません。本体の更新でIpsumが追加されることはあっても、今使っているテーマはそのままです。自分でIpsumを有効化したときだけ切り替わります。
Q. Ipsumは日本語に対応していますか?
日本語の表示自体は問題なくできます。ただし2026年9月時点の開発版では、テーマの日本語訳はまだ無く、日本語用の書体の指定や、長音・小さい仮名を行頭に置かない設定もありませんでした。line-break: strictの追加と和文書体の設定で対応できます。
Q. 今のサイトをIpsumに乗り換えるべきですか?
急ぐ必要はありません。Ipsumは新しくブログを始める人向けの初期状態として作られています。独自テーマや他のテーマで運用中のサイトを乗り換えると、デザインや機能の作り直しが必要になるので、正式版が出てから、目的に合うかで判断してください。
Q. Ipsumの正式版はいつ使えますか?
WordPress 7.2の正式版とともに、2026年12月に公開される予定です。それまでは公式リポジトリやPlaygroundで開発版を試せます。
テーマの日本語対応や、7.2への更新が心配な方へ
新しいテーマは、日本語で使うと今回のような細かい調整が必要になることがよくあります。当社はWordPress専門のエンジニアとして、テーマの日本語向けの調整や子テーマでのカスタマイズ、メジャーアップデート前の動作確認を行っています。「7.2に更新して大丈夫か確認してほしい」「Ipsumを日本語サイト向けに整えたい」といったご相談も、お気軽にどうぞ。
更新履歴
- 2026年9月29日:作成(Ipsum開発版 c738c485 を当社で検証)