「AIに読まれることを前提に、サイトの中身を用意しておくべきか」。llms.txtという言葉がSEOの話題に上るようになって、こう考え始めた方は多いと思います。その次の動きが、WordPress本体の開発チームから出てきました。記事そのものを、人にはこれまで通りHTMLで、AIにはMarkdownで返す「Markdown feeds」という仕組みです。

結論を先にまとめます。Markdown feedsは、WordPress公式のAIプラグインが次のバージョン(1.4.0)向けに実装中の実験機能で、記事のURLに指定を付けるか、AI側が「Markdownで欲しい」と伝えると、本文をMarkdown形式で返すものです。2026年9月18日時点ではまだ公開されておらず、サイト運営者が今やるべき作業はありません。ただし、llms.txtとの違いと「AIに読まれるサイト」の方向性は、今のうちに押さえておく価値があります。

この記事は2026年9月18日時点の情報です。AIプラグイン1.4.0のリリース、または実装の確定時点で更新します。

WordPressの「Markdown feeds」とは何か?

Markdown feedsは、WordPress公式のAIプラグイン(WordPress.orgで「AI」という名前で配布されているもの)の実験機能として提案されています。役割は一つで、同じ記事を、要求に応じてHTMLではなくMarkdownのテキストで返すことです。Markdownは、見出しを「#」、強調を「**」で表すような、装飾の少ない書式です。AIが文章を読み取るときに、HTMLのタグやレイアウト情報が邪魔にならない形式として広く使われています。

提案は2026年7月8日にGitHubで出され、9月16日の開発チームの週次まとめで「作業を再開し、専用URLとcontent-negotiationヘッダーの両方に対応する」方針が共有されました。同じまとめの中で、この機能は「エンドユーザーではなくAI消費者向け」と位置づけられています。人間の読者の画面は何も変わりません。

返し方は2通りあります。

  • 専用URL:記事のURLに指定を付けてMarkdown版を取得する方法。サイト全体の新着をMarkdownで返すフィードも用意されます
  • content negotiation:AI側がリクエスト時に「Markdownで欲しい」というヘッダー(Accept: text/markdown)を送ると、同じURLでMarkdownを返す方法。キャッシュとの相性を考えて、こちらは初期状態では無効にする設計です

なお、9月18日時点でWordPress.orgに公開されているAIプラグイン1.3.0には、この機能は入っていません。当社で配布版のPHPソース191ファイルを検索しましたが、Markdown出力に関する実装は見当たりませんでした。1.3.0の公式発表でも、Markdown feedsは「1.4.0で予定している新しい実験」と書かれています。

なぜ今、WordPressがAI向けの出力に取り組むのか?

背景には、AIがWebを読む量と、AIがWebへ人を送る量の不釣り合いがあります。AI検索やAIエージェントは大量のページを読み込みますが、読んだ分だけ訪問者を返してくれるわけではありません。この構造の変化は、WordPressの将来性をデータで検証した記事で詳しく扱っています。

もう一つの理由は、HTMLがAIにとって雑音だらけだということです。当社はWordPress専用のAIチャットボットを提供していて、お客様の公開ページを読み込んで回答の根拠にする仕組みを運用しています。実際にやってみると、記事の本文よりも、ナビゲーション、フッター、関連記事、広告、共有ボタンといった本文以外の要素を取り除く前処理に手間がかかります。取り除きが甘いと、AIが「関連記事のタイトル」を本文の一部として引用してしまうことも起きます。Markdown feedsは、この前処理をサイト側で済ませて渡す発想です。

WordPressのAIチームは同時期に、AIツールからWordPressの機能を呼び出すMCP Adapterや、記事の埋め込みベクトル(Embeddings)にも取り組んでいます。並べて見ると、「AIから読める・呼び出せるWordPress」へ本体側が動いていることが分かります。

llms.txt(サイトの案内図)とMarkdown feed(本文そのもの)の役割の違いを示すイメージ

llms.txtとMarkdown feedsは何が違うのか?

混同されやすいので整理します。llms.txtは「サイトの案内図」、Markdown feedsは「本文そのもの」です。llms.txtはサイトのトップに置く1枚のテキストファイルで、何のサイトか、主要ページはどこかをAIに伝えます。一方Markdown feedsは、個々の記事の中身をAIが読みやすい形で受け取る仕組みです。地図と本、と考えると分かりやすいと思います。

この2つについて、関係する3者の立場が異なります。

立場 公式の見解 出典・時期
Google(AI Overviews・AIモード) 表示されるために「新しい機械可読ファイル、AI向けテキストファイル、特別なマークアップは不要」。通常どおりインデックスされ、スニペットが表示できることが条件 Google検索セントラル「AI機能とサイト」
WooCommerce(AIショッピングエージェント対策) llms.txtの設置を案内しつつ、「追加すればAIの推奨が増えるという直接的な証拠はまだない」と明記。AnthropicとPerplexityが読み取りに対応 WooCommerce公式ブログ、2026年6月29日
WordPress AIチーム 本文をMarkdownで返すMarkdown feedsを実装中。別途、AIで要約したllms.txtを自動生成する提案も出ているが、こちらは時期未定 GitHub WordPress/ai #845・#855・#918

つまり、Googleの検索とAI要約に出るためには何もいらない。AIエージェントに読ませやすくする仕組みは、WooCommerceもWordPressも試している途中、というのが2026年9月の状況です。「llms.txtを置けば順位が上がる」という話とは切り分けて考えてください。llms.txtそのものの要否は、WordPressにllms.txtは必要かを整理した記事で扱っています。

サイト運営者が今やるべきことは?

今の時点では、何もしなくて構いません。機能がまだ公開されていないので、待つのが正解です。それでも今のうちに確認しておくとよいことが3つあります。

  • 記事の本文が、見出し・段落・リストで構造化されているか。Markdownに変換されるのは本文なので、ページビルダーで装飾だけ凝った記事や、画像に文字を埋め込んだ記事は、AIには中身が伝わりにくいままです
  • Googleにきちんとインデックスされているか。GoogleのAI要約に出る条件は、AI向けの特別対応ではなく、通常の検索に出られる状態であることです。更新やバックアップの基本を守り、noindexの誤設定がないかを見直してください
  • AIプラグインの実験機能は、有効化しなければ動きません。1.4.0が出ても勝手にMarkdownが公開されることはないので、公開範囲を自分で決められます

逆に、やらなくてよいこともあります。Markdown feedsを先取りする非公式プラグインを入れること、記事を全部Markdownで書き直すこと、AI向けの重複ページを自作することです。公式の仕組みでは、Markdown版のページには検索エンジンに「インデックスしない」という指示(X-Robots-Tag: noindex)が付く設計になっています。自作すると、この配慮が抜けて重複コンテンツの問題を招きます。

AIプラグイン1.4.0で使えるようになる見込み

提案は「1.4.0」というマイルストーンに紐づいており、実装のプルリクエストはレビュー待ちの状態で、9月16日にも更新されています。開発チームの9月2日の週次まとめでは、AIプラグインの次回リリースは埋め込み(Embeddings)機能の完成待ちとされていました。したがって、1.4.0にMarkdown feedsが「実験」として同梱される可能性は高いものの、時期は確定していません。この記事は1.4.0が出た時点で更新します。

技術者向け:実装はどうなっているか(プルリクエスト時点の仕様)

ここからは開発者向けです。以下はGitHubのプルリクエスト #855 の内容で、マージ前のため、公開時に変わる可能性があります。

項目 プルリクエスト時点の仕様
フィード /feed/markdown/ または ?feed=markdown で、新着をMarkdownで返す
個別記事 ?format=md を付けるとMarkdown版。9月16日の合意で、WordPress.orgの慣例に合わせて output_format に名称を変える方向
content negotiation Accept: text/markdown 等を受けると同じURLでMarkdownを返す。設定でON/OFFでき、初期値はOFF
レスポンスヘッダー Content-Type: text/markdown。X-Robots-Tag: noindex。negotiation有効時は Vary: Accept を付与
変換 html-to-md ライブラリを同梱し、HTMLをMarkdownへ変換
公開範囲 公開コンテンツの可視性ルールをそのまま適用(非公開・パスワード付きは出さない)
拡張 フィルター wpai_markdown_singular_sections と wpai_markdown_feed_item_sections で出力する部位を調整

設計で注目したいのは、content negotiationを初期OFFにした理由です。担当者は8月27日のコメントで、WordPressではキャッシュの構成によってヘッダー判定が正しく効かず、奇妙な不具合が起きることがあると述べ、実際に別のプラグインで報告された例を挙げています。Acceptヘッダーで出し分ける場合、ページキャッシュやCDNが「同じURLだから同じ内容」と判断して、AI向けのMarkdownを人間に返してしまう事故が起こり得ます。Vary: Accept を付けるのはそのための対策ですが、すべてのキャッシュ層がVaryを尊重するわけではありません。専用URLを主、ヘッダーを従にした判断は妥当だと思います。

自分のプラグインやテーマで先行実装する場合も、この点は同じです。想定される最小構成は、クエリ変数を登録して template_redirect でMarkdownを出力する形ですが、必ず noindex を付け、キャッシュプラグインの除外設定を確認し、公開範囲のチェックを本文取得前に行う必要があります。ただし、公式実装が数か月以内に出る見込みなので、当社としては自前実装より公式の実験を待ち、フィルターで出力部位を調整する運用を勧めます。

マージ前でも、プルリクエストに用意されたWordPress Playgroundのプレビューで動作を確認できます。

更新履歴

  • 2026年9月18日:初版公開(AIプラグイン1.3.0には未搭載、PR #855はレビュー中の時点)

まとめ:AIに読まれるWordPressへ、慌てず準備する

Markdown feedsは、WordPress公式のAIプラグインが1.4.0向けに実装中の、記事をAI向けにMarkdownで返す機能です。Googleの検索やAI要約に出るために必要なものではなく、AIエージェントに本文を正確に読ませるための仕組みです。今やることは、本文をきちんと構造化して書くことと、公式の実験が公開されたら自分で有効化の判断をすることの2つです。

「自社サイトをAIにどう読ませるか」「MCPやAbilities APIを使って何ができるか」といった相談は、技術の動きが速いので、都度調べるより相談相手を持つほうが早いことが多いです。当社では顧問エンジニアサービスで継続的な技術相談をお受けし、AI連携を含む独自機能はカスタマイズ・プラグイン開発として実装しています。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。

WordPressサイトをお持ちの方へ

貴社サイトのURLを入れるだけ。
専用AIチャットの体験ページが、数分でできます。

公開ページを自動で読み込み、出典リンク付きで答えるAIチャットを無料で作成。書かれていないことは「記載がありません」と正直に答えます。入力はURLとメールだけ、売り込みはしません。

専用AIチャットを無料で作ってみる →

WordPress専用 AIチャットボット「Edel AI Hybrid Chat」(合同会社 Edel Hearts)

この記事を書いた人

矢部 敦

矢部 敦合同会社Edel Hearts 代表

WordPress専門の開発会社を経営。プラグイン開発・カスタマイズ・保守を専門とし、18時間におよぶUdemyのWordPress講座を開講。出典付きで回答するAIチャットボット「Edel AI Hybrid Chat」開発者。著書『WordPress はじめての最小プラグイン』(Kindle)。本ブログの記事は、実際の開発・運用で得た一次情報をもとに執筆しています。会社情報はこちら

この記事をシェア